掲載写真は当工房の重要な設備であるシャッタースピード計測器です。
1/1000のシャッタースピード計測時の物ですが、実際には1/1024なので、規格値は0.98mscとなりますので、ほぼほぼドンピシャの中央値(露出時間)適正値が計測されています。
下記の写真4枚をご覧ください。
写真A
この写真は右サイドが暗くなっています。
写真B
この写真は左サイドが暗くなっています。
写真C
この写真も左サイドが暗くなっているのがよく判りります。
写真D
この写真は右サイドが多重露光になっていて、一部が露出オーバーになっています。
上記4枚の写真の様な症状を経験されたことはあるでしょうか?
これはいずれもシャッタースピードが適切に調整されていないカメラで撮影した作例です。
写真Aは右サイドが暗くなっていますが、これはフィルムゲートの閉口部にかけて、後幕のスリットを閉じるスピードが速すぎてスリット閉口部が露出不足となっている為にこの様な写り方になります。
写真B/Cは左サイドが暗くなっていますが、これはフィルムゲート開口部が最も露出不足になっています。要因は先幕がスタートした直後に後幕がスタートするタイミングが早すぎる為に適正なスリット幅が形成されずに開口部が露出不足となっています。しかし後幕の速度が先幕より遅い為にスリット閉口時には、中央から閉口部にかけて露出過多となっています。
これでお解りいただけると思いますが、フィルムサイズの横幅36mmの中央値の露出が適正だからと言って、シャッタースピードの調整が正常に出来ているかと言うと、そうでもないと言う事なのです。
写真A/B/Cをご覧になって残念な気持ちになる方は沢山いらっしゃると思います。
これらは全てシャッタースピードが調整できていない不具合です。
要は露出ムラと言う現象です。
ここまで差が出ると、中央値は1/1000でも右サイド・左サイドではおそらく倍以上の露出差が出ています。
右サイドから中央そして左サイドにかけて全て位置で露出時間に違いが有り露出時間にムラが有る為に起こる現象です。
なので、中央値が1/1000計測値が出だからと言って適正露出が得れてるとは限りません。
上記の写真A/B/Cは全て1/1000時に起こった現象で、1/500以上の高速シャッター時に発生します。
また、写真Dは右サイドが多重露光となり、一部が露出オーバーな写真となっています。
これは全体的な露出はムラが無く均一に露出されていますが、スリットが閉じたその後に、もう一度後幕が勢いで跳ね返り、スリットが開いてしまい、そこが多重露光となってしまっています。
これはシャッターブレーキが適切に効かずに後幕が跳ね返ってしまう為に起こった不具合です。
こういった不具合を起こさない為には、A右サイド・B中央部・C左サイドの3点位置共に同じ露出を得られるように調整しなければなりません。
またスリットが閉じた時に適切にブレーキが効き撥ね返らない様に調整しなければなりません。
ここが技術者の腕の見せ所なのです。
単にシャッターテンションの調整だけでは成り立ちません。
幕張位置・テンション・スタートタイミング・ブレーキ、これだけではありませんが、最低でもこれらの微妙なオペレーションバランスが合致した時に実現できます。
当工房では綺麗な写真が撮れるカメラ造りに拘っております。
綺麗な写真とは、上記の様な露出ムラの有る写真ではなく、露出ムラの無いA/B/C地点同じ露出が得られる、露出ムラの無い写真の事です。
なので、シャッター幕張替・スピード調整時には、次のポイントを重要視して調整しております。
①シャッター幕に撓み・歪みが無く光線漏れが無い事。
②A/B/C地点全て均一の露出が得られるように調整する事。
③先幕速度・後幕速度が適正値内で一定の速度を保つ事。
④シャッター音が静に、また跳ね返りが無きよう適正位置で停止する様に調整する事。
最低でも上記の事が守られ調整されたカメラでは、露出ムラの無い均一な露出が得られる綺麗な写真が撮影出来ます。
下記の写真をご覧ください。
上記写真はA/B/C地点の露出時間が表示されています。
ほぼ同一値で均一な露出が計測できています。
上記の写真は先幕速度と後幕速度そして中央露出時間を表示したものです。
先幕と後幕がほぼ同一速度で保たれているのが判ります。
これで計測値のみの調整判定で、光線漏れトラブルが無い事、A/B/C地点で露出ムラが無く均一に適正露出が得られている事から合格判定となります。
更に、それを裏付ける為に実際にフィルム装填して実写撮影テストを実施します。
下記の写真をご覧ください。
ご覧頂くと一目瞭然ですが、トップからのA/B/C/D写真とは異なり、右サイド・中央・左サイドにおいて均一な露出が得られて、露出ムラの無い綺麗な写真が撮れています。
日向・日陰・曇天・木陰其々においても、被写体が明るくても暗くても、右サイド・中央・左サイド全て均一露出が得られています。
確りと調整されたシャッタースピードのカメラで撮る写真は、本当に端から端まで綺麗な写真が撮影出来ます。
過去に撮影結果だけを見て、自分の撮影の仕方が悪いのか?カメラの精度が悪いのか?満足できない結果にモヤモヤがある事も多々あると思います。
もしA~Dの様な撮影結果が出たならば、それは撮影者の技量の問題ではなく、カメラの問題です。
確りと信頼できるカメラ屋さんで調整してもらいましょう。
調整されたカメラで撮る写真はワクワクが止まりません。
フィルム装填から撮影・現像が出来上がるまで楽しみ一杯です。
そして現像が出来上がったプリントを見た時にきっと感動が沸き起こります。
貴方だけの奇跡の一枚がきっとあります。
素敵な写真ライフをお楽しみください。
復刻堂では計測機器による数値だけではなく、調整後のこうした実写撮影テストを実施しエビデンスをしっかりとった上でレストア品を販売させていただいております。
調整の際に準拠している「許容される誤差」公差については、JIS規格B7091-1992、
これに対応する国際規格はISO516-1986に準じております。
皆様の愛機・カメラでもA~Dの様な症状が見られましたら、点検時期が近いかもしれません。
是非シャッタースピードの点検や調整をお勧めいたします。
復刻堂では無償点検やその機に適したメンテナンスのご提案をさせて頂いております。
また、オーバーホールするまでも無く、シャッタースピードだけ調整したいと言うだけでも承っておりますので、気になった方は是非お問い合わせくださいませ。
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